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2014年04月28日 (月)人事労務

産業競争力会議 労働時間規制見直しへ向け再チャレンジ

安倍政権は6月につくる成長戦略の柱として、再び労働時間規制の見直しに向け動き始めました。
第一次安倍政権の時はホワイトカラーエグゼンプションの議論が一部マスコミによる「残業代ゼロ法案」キャンペーンにより廃案に追い込まれ、第二次安倍政権でも戦略特区を活用するなど実効性を担保しつつ議論をスタートしたものの労働側の猛反対にあい、早々に頓挫していました。

ところがここにきて再び労働時間規制を見直す機運が高まってきました。
4月22日に首相官邸で経済財政諮問会議と産業競争力会議の合同会議が開かれた際、安倍首相から「時間ではなく成果で評価される働き方にふさわしい、新たな労働時間制度の仕組みを検討してほしい」と改めて脱労働時間規制へ向けた議論を指示されたのがきっかけです。これは、労働者本人の希望や労働組合との合意を前提に、柔軟な働き方ができるようにこれまでのような「労働時間=賃金」という考え方を変えていこうというものです。

今回、規制改革会議で出された提案では、労働時間と報酬のリンクを外した「新たな労働時間制度」として、次の2つのタイプが提示されています。

ひとつは、「労働時間上限要件型」と呼ばれており、労使の合意と本人の希望選択をもとに適用され、労働時間に応じてではなく、職務内容や成果等を反映して報酬を支払うタイプです。
これは、職務等に限定のあるいわゆる「限定正社員」など、職務内容を明確に定められる者(たとえば、営業職)について、労働時間ベースではなく成果ベースでワーク・ライフ・インテグレーションの下で働く場合に有効であるとされ、また、なにも高い専門性等を有するハイパフォーマー人材のみならず、育児や介護を要する世代や定年退職後の高齢者、若者等の活躍も期待されるとしています。ただし、職務経験が浅いなど、労働時間を自己の能力で管理できない者や随時の受注に応じて期日までに履行するなど、労働時間を自己の裁量で管理することが困難な業務に従事する者は、対象外とされています。

これらを総合して考えてみると、たとえば、次のようなことが想定できます。
①営業職に限定して新入社員を採用。
②職務経験が浅い当初、6か月間は時間外労働を支払う。
③6カ月経過後は成果ベースに変更され労働時間の適用を外す。
④上記①~③については入社時に本人と合意しておく。
使用者サイドとしてはあまりにも好都合な雇用形態となるだけに、長時間労働を抑止するための予防策は必要だろうと思います。

 もうひとうは、「高収入・ハイパフォーマー型」と呼ばれており、年収1千万円程度の年収下限要件を定めた上で、本人の希望に基づき、仕事の成果・達成度に応じて報酬を支払うタイプです。
これは、高報酬が前提であるせいか、「労働時間上限要件型」と比してもその規制はさらにゆるくなっていると感じます。長時間労働への対策も「使用者は利用者の就労状況を把握し、取得した情報は産業医面談、健康診断受診等の健康管理に活用する。」としているだけで具体的な規制は示されていません。

労働時間規制を見直し、賃金とのリンクを外すことは、私は経済がソフト化して久しい我が国の実情にはマッチしたものとなると考えています。これにより国家として成長戦略を描くことが可能となり、高度成長期のようなダイナミズムをもたらすことが期待されます。その意味において、今回の産業競争力会議から出された提案は評価に値するものと考えます。
しかしその一方で、長時間労働防止への対策はやはり必須要件です。これは「労働基準監督署による監督強化」ではなく、あらかじめ制度としてワンセットで考えなければ実効性は高まらないと思っています。

いずれにせよ、「今までのやりかたが一番」であるはずがないことは自明なのですから、何らかの変革、改革を断行することは待ったなしの状況です。ダーウィンも『進化論』のなかで「生き残るものは強い者ではなく、変化できる者である」といっているように、商品ライフサイクルが短く産業構造の遷移が著しい今日においては、スピード感をもって変化し続けることが最も大切です。
立場によっていろいろな意見があるのは当然ですが、我が国は、資本主義国家です。最低限のセーフティネットは確保しながらも、ジャストインタイムで変化を遂げ成長し、富の配分を繰り返していくことが、大原則であることを忘れてはならないでしょう。

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