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2017年06月03日 (土)コラム

従業員の海外赴任決定時に、企業が配慮するべき健康管理3選

こんにちは。HRプラス社会保険労務士法人の三枝です。
今回は海外への長期赴任時に企業が講ずべき従業員の健康管理についてご紹介します。


①まずは法定健診の受診を
労働安全衛生規則第45条の2において、事業者は労働者を日本国外の地域に6月以上派遣しようとする時、または、6月以上日本国外の地域に派遣し、その労働者を日本国内に帰任させる時には、労働者に対して定期診断の項目に加えて、厚生労働大臣の定める項目のうち、医師が必要であると認める項目について追加項目の健康診断を受けさせなければなりません。(例:B型肝炎ウイルス抗体検査など)
まず、この健康診断で異常の所見があり、治療が必要と認められる場合には、出国前に治療を完了させる必要等が発生する場合がありますので、一度、早い時期に受診をさせる必要があります。


②予防接種と歯科治療
まずは、海外の衛生環境について、一見環境が整っている国であっても、気候性の違いにより伝染病が封じ込められていない地域があったり、そもそも、衛生環境自体が整っていなかったりすることもしばしばあります。

厚生労働省では、在外邦人の身を伝染病から身を守るという意味で、渡航前に接種が推奨されているワクチンがあります。
必須ではありませんが、実務ベースの観点から見た時には、渡航準備として、スケジュールに組み込みたいものです。
特に、生水、生野菜の摂取から経口感染するA型肝炎ウイルスや、感染した動物に咬まれ発症するとほぼ致死率100%の狂犬病、些細な傷からでも感染する可能性のある破傷風菌のワクチンについては、どの地域でも接種推奨予防接種となっております。ただし、これらのワクチンは1回で打ち切るのではなく、数週間時間を空けて複数種接種することになりますので、赴任前ギリギリの接種開始となると、日本国内で接種完了前に出国となる可能性も出てきますので注意が必要です。

また、歯科治療は完了させてから出国するのがベターでしょう。
長期赴任の歯科治療については、32日間以上加入の長期用海外旅行者の生命保険で免責項目とされ、また、日本国内の健康保険に加入している状態で海外医療機関にかかり海外療養費の請求を請求しても、日本国内並みの歯科治療費で完了することは、非常に難しいです。
海外療養費を請求したにせよ、歯科治療材料を輸入に頼ることのある国では日本との治療単価が大きくずれていること、海外療養費の計算は日本国内を基準に考えられているため、この単価のずれの補てんを全くできない恐れがあります。
仮に、海外旅行者生命保険に31日以下の短期で加入したにせよ、歯科治療については、全部がキャッシュレスというわけではなく、上限金額が設けられていることが多いため、赴任者の不安の解消、会社側の手続の煩雑さを減らすためにも、赴任者の方へ赴任前に歯科治療を完了させることを勧めましょう。


③長期滞在者に、健康診断を課す国もある
全ての予防接種、治療を完了させた後に、最後の壁となるのが、外国の防疫・検疫に関する法律の壁です。
1回の滞在期間が90日を超える長期滞在者に対しては、就業許可や居留許可を取得する時に、さらに、日本国内で行った健康診断項目とは別に、ビザ取得時健診を課せられる国があることにも留意しましょう。

アジア圏においても、中国、ベトナム、シンガポールなどで、エイズ検査・結核検査を課しています。また、このビザ取得時健診については、国ごとに指定している医療機関が決まっていますので、街中のどこの病院で受診してもよいという訳ではありません。また、該当国に渡航してから指定病院で健診を受ける場合もあります。また、この結果によっては、防疫の観点から、滞在許可が下りないケースもありますので注意が必要です。

■おわりに
海外赴任に際しては、健康状態の確認、治療、予防接種、歯科治療を完了させるのに少なくとも2~3か月の時間を要することもしばしばです。またビザの取得時健診も含め、実際に海外居住国のビザが下りるところまでのスケジュールを見ると、全体で4~5か月程度要することもあります。この長い期間、事業主、従業員側双方での負担感を減らし、事故防止のためにも、海外赴任に関する内示は早めに出し、余裕のあるスケジューリングを検討することをお勧めします。

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