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2017年12月12日 (火)コラム

海外赴任する日本人の戸惑う旧正月の習慣

HRプラス社会保険労務士法人の三枝です。
今回は、日本以外の年末年始の漢字文化圏の商習慣についてみていきたいと思います。海外現地で採用された従業員と日本から赴任した従業員で考え方が大きく違いますので、その差異にスポットを当てたいと思います。

日本ではすっかりと死文化となりつつある太陰歴(旧暦:太陽ではなく月の暦)での旧正月のお祝いですが、実は、この時期に、日本同様にお年玉を渡す習慣があるのですが、子供に渡すのみならず、成人してからも、金銭授受を行う習慣があるので、注意が必要です。

■旧正月の金銭授受
<韓国の習慣>
ソルラル(韓国の旧正月)で渡すお年玉のことを「セベットン」と言います。韓国では、前朴槿恵政権下で接待やその見返りを求める行為に強い規制が敷かれるようになったこと、また、会社の風土として、上司から部下にお年玉を渡す習慣はあまりありません。

<中国語圏、華僑、華人間の習慣>
中国、台湾、シンガポールやタイにいる華僑系の人々、ベトナムの人々の間では、会社の上司が部下に、部下の人が上司の子供にお年玉を渡す習慣が未だに根強く残っています。
中国や在外華僑の間では、春節(中国語圏の旧正月)や祝い事で贈答する金銭を包む封筒で真っ赤な封を用いることからお年玉の代わりになるものを、「紅包(ホンバオ)(アンパオ)」、また、中国大陸の南部では「利是(ライシー)」と呼ぶものがあります。結婚等の慶事でも同様の封に包んで金銭を包み、慶事で出費が多くなると「紅包(ホンバオ)」のことを同音でかけて「紅爆(ホンバオ:赤い爆弾)」と冗談で言うこともあります。上司が部下にお年玉を渡すことも現地では決して珍しいことではありません。

<ベトナム>
ベトナムでも、中国同様に「リーシー」というお年玉を渡す習慣があります。社内や家庭のみならず、テト(ベトナムの旧正月)前後には、近隣のお世話になっている人の間でも、金銭のやり取りが行われる習慣があります。

■旧正月期間でのお年玉の扱いはどうするのか
中国や華僑の多い国々、ベトナムで、駐在日本人が戸惑うのは、現地従業員に対して渡すこの「お年玉」の習慣です。自分のポケットマネーでやるのか、はたまたボーナスとして会社の経費でやるのかということ、また、会社の経費でやるには、現地の社会保険料や税金の控除をする手配をしなければならないということです。この時期になると、現地の駐在員や人事労務担当者の間では、「実働11か月、人件費は13か月」という冗談もちらほら聞こえます。

■お年玉を渡すことで離職率が上がる?
もう1つ留意しなければならないのは、「お年玉(ボーナス)」というまとまった現金を従業員に渡すことで、離職者が出やすくなるということです。中国や台湾、華僑の人々、ベトナム人、その他アジアの国々の人々の家族の結びつきは核家族化が進んだ日本人が思っている以上に強固であることがしばしばです。都市国家であるシンガポール、中央への一極集中と交通網が発達した進む韓国や台湾を除き、その他の発展途上国では帰省をする際には、大都市から地元に帰るだけでも帰途で数泊を要することも珍しくなく、旧正月の前後2週間くらいは、国内移動に費やすこともしばしばです。出身地との方言差や少数民族に至ってはそもそも母語が違う大都市ではなく、地元で稼ぎ口があればそちらで生活したいと考える人が多いのも事実です。
日本では、正月明けに大量離職は考えづらいのですが、日本でも瓦解しつつある終身雇用という考えは中国や華僑の人々が多い国々、ベトナムでは一切ないので、有利な労働条件があれば、即断で職を辞すのも珍しくありません。そのため、旧正月後に現地従業員が急に減って困ったと嘆く日本人人事担当者も少なくありません。
ボーナスを渡せば離職率も視野に入れなければならない、渡さなければ従業員の不満が高まり離職率が上がるというジレンマに悩まされることも多い事案なので、前任の方がいらっしゃる場合には、現地の人々の慣習も併せて引継ぎをすることで、業務をスムーズに進めることができることと思います。

■縁起物を渡すときには金額、贈り物にも注意を!
忌み数と送り物で避けるべき物品を知っておくと現地従業員と日本人赴任者との間のコミュニケーションも円滑になります。
中国語圏では、「4」が忌み数の筆頭となります。「4」と「死」が同じ発音の為、新年早々縁起が悪いと敬遠されます。また、「5」についても「無」となるため、単数で用いられる場合は敬遠されます。ただし両方の数を使用した「54」は「無死」となるため、無病息災を表す数、逆に「14」は、「十死」、苦しみぬいての死と同音となるため、避けられる数字となります。金銭面では「4」は避けられますが、送り物の数や贈答物の中身の個数については「4」となっても問題はありません。
逆に、中国語圏で縁起が良いとされる数は、日本同様に「8」です。中国語の新年や開店祝いでの常套句「恭喜発財(商売がうまくいき、儲かりますように)」という文言の「発」と「8」の音が近いため、非常に好んで使われます。中国語圏ではお祝いで包む金額は日本と違い、基本的に「4」を除く偶数が良いとされていますので、この点も注意が必要です。
韓国語でも、「4」は「死」と同様の音となるため、やはり縁起が悪いとされます。
ベトナム語で縁起が悪いとされる数字は「3」と「13」です。民間諸説で色々とありますが、「3」は「惨」と同音のため、最も敬遠される数です。縁起が良いとされる数字は「9」「久」と同音となるため、縁起が良いとされます。ただし、「3」を三つ並べて「333」とすることは足して「9」になることから縁起が良いとされます。
中国語圏で祝いの贈答物の中で送ることがご法度とされるものは、時計、扇子、傘(折り畳み傘)、風鈴、刃物の類、飲食物では粽(ちまき)です。
時計は中国語で「鐘」、発音が「終」と同音の為、時計を送ると「送鐘」=「送終(死者を見送る)」と同音となるため、受取側としては、相手からの絶縁を意味するものとなります。また扇子や傘については、「散」と近い音となるため、また、風鈴は、「分離」と近い音となる為、こちらも別離を彷彿とさせます。刃物は日本同様に、縁を切ることを、また、粽は、地域によって死者の弔いの際に、近所に配る習慣があるため、「死」を連想させる為、避けるべきものとされます。

■まとめ
海外赴任で駐在する時、現地採用の従業員との良好な人間関係を構築するための鉄則は、「郷に入りては郷に従え」という諺につきると思います。管理監督を行う上で、赴任先国の習慣と日本との文化習慣の差を知ることで、事業をうまくハンドリングすることができることもあります。仕事をする時の同僚も上司も、お客様も相手は人ですので、参考の一助になればと思います。

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