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2017年12月27日 (水)コラム

パワハラに関する裁判例から考える

こんにちは。HRプラス社会保険労務士法人の大谷です。

忘年会真っ盛りの12月、この時期は「ハラスメント」に要注意です。酔った勢いで「セクハラ」「パワハラ」につながる危険性のある言動を起こさないように十分気をつけましょう。

さて、今回は「パワハラ」に関する裁判例から、どのような場合に法的に違法となるかを考えてみましょう。

 

■今年のパワハラ判例(フクダ電子長野販売事件 長野地裁松本支部 平29.5.17判決)

この事案は医療機器販売業を営むY社の元社員4名(女性)が在職中に代表取締役からパワハラを受けたとして、Y社に対しては会社法350条に基づき、代表取締役に対しては不法行為に基づき、慰謝料等の支払いほか、退職直前に降格処分とされたことによる賃金の減額分相当の支払いを求めたものです。

本判決ではパワハラに関する請求を一部認容するとともに、降格は無効として賃金減額分の支払い請求を認めました。

上場企業100%子会社トップによる事件で、トップが40~50歳代の女性社員に対して朝礼などで「自分の改革に抵抗する抵抗勢力は異動願いを出せ。50代はもう性格も考え方も変わらないから」「50代は転勤願を出せ」「おばさんたちの井戸端会議じゃないから、議事録を作れ」など年齢のみを理由に能力が低いという内容の発言や役に立たないなどの発言を繰り返した代表取締役の言動が「不法行為」に該当すると判断したところがポイントです。

 

■パワハラに違法性の判断の枠組みについて

パワハラの違法性については、上司(使用者)が部下などへ業務指示する際に、使用者が有する権限と関連がある場合と関連がない場合(つまり単なるいじめや嫌がらせなど)と分けて考えることが必要です。判例では、いじめや嫌がらせの場合は被侵害利益の種類とか程度と侵害行為との相関関係により「社会通念上許容される限度」を超える場合に違法となります。

一方使用者の有する権限と関連している場合、つまり厳しすぎる教育、不適切な発言による指導や過度な叱咤激励は「心理的負担を過度に蓄積させるような行為」として原則として違法とされます。裁判では上司の職務遂行過程における「権限濫用か否か」という判断ではなく「不法行為」の一般的な枠組みで違法判断していくものです。

 

■パワハラの判断基準

では、パワハラにより違法とされる場合、誰を基準とするのでしょうか?パワハラによる心理的負荷は、その「被害者の主観」が原則として判断基準となります。この場合、被害者「個人」を基準とするか、「被害者と同様の立場にある人々(平均的な被害者)」を基準とするかが問題とされることがあります。この点判例では「平均的な被害者」を基準としています。「海上自衛隊事件 (福岡高裁平20.8.25)」では、被害者が「馬鹿かお前は。三曹失格」など罵倒を繰り返し浴びせられたことが、1審判決では「その言動は全体としていじめとして評価されるものではなく、指導・教育等として許容される範囲」としましたが、控訴審判決では「心理的負荷を過度に蓄積させるような言動かどうかは、原則として、これを受ける者について平均的な心理的体制を有する者を基準として客観的に判断されるべき」と述べ、その罵倒した上司の行為を違法として国の責任を認定しました。

 

このように見てきますと、上司が管理監督者として部下を注意するときは、その時の感情(怒り)を抑え、人格否定をするような発言とならないよう、その犯したミスや言動を事実として挙げるなどして注意を促す、そして本人から反省の弁が出るような「叱り方」が大切です。また何度注意しても改善しないようであれば、その問題を一人で抱え込むことなく、自分の上司や人事部とも情報共有・連携した方が良いでしょう。第三者の意見や客観的な視点を取り入れ冷静に対応し、当該「問題社員」に対してうっかりパワハラを犯さないように気をつけましょう。

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