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2018年09月25日 (火)コラム

パワハラの定義を改めて確認する

こんにちは。HRプラス社会保険労務士法人の大谷です。

このコラムで「ハラスメント」を取りあげてからほぼ1年が経ちました。そのため日頃から「ハラスメント」という単語にとても敏感になっています。
特にこの数カ月はスポーツ界における「パワハラ」のニュースがとても目立ち、そのたび街頭インタビューで「家に帰ると奥さんからパワハラ受けた」「上司から残業命じられたのはパワハラだ」とか間違った認識で「パワハラ」を使っている人の多さに辟易としています。
そこで今回は改めて「パワハラ」の定義を確認し、「パワハラ」を少しでも減らしていく手段について考えていきたいと思います。

■パワーハラスメントの定義
パワーハラスメントについては厚生労働省が「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキンググループ報告」(2012年)で以下のとおり定義(注:(1)~(4)の分類は筆者)しています。

(1)職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、
(2)職務上の地位や人間関係などの職場での優位性を背景に、
(3)業務の適正な範囲を超えて、
(4)精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場環境悪化させる行為

を言います。
(1)は対象範囲を職務でつながっている人間関係とそこでの出来事と限定していて、(2)から(4)が構成要件を示しています。この3つの要件がポイントです。


■3つの構成要件

1つ目が「優位性」。つまり行為者にパワーがあることです。
ワーキンググループは、この点について以下のとおり付記しています。
「上司から部下に行われるものだけでなく、先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対して様々な優位性を背景に行われるものも含まれる。」
新任課長がその課の専門知識にあるベテラン社員から「そんなことも知らずによく昇進してうちの課に来ましたね」と言われたときのようなケースです。

2つ目は「業務の適正は範囲を超えて」です。ここが「指導」になるか否かのポイントで線引きの難しいところです。またどれだけの期間続けたかという「継続性」も問題となります。同じ行為を一度ならず執拗に繰り返すような場合です。

3つ目が「苦痛」。すなわち「ダメージ」で、これは直接相手にするものにとどまらず組織(集団)も対象となります。たとえばある一人の社員が上司から怒鳴られ、そのことでメンバー全員が精神的に苦痛と感じるような場合です。
この3要件が揃って初めてパワハラとなるのです。

 

■感情問題として捉える
しかしながら現実問題としてどのような事例がパワハラとなるかは判断のとても難しいところです。次の場合みなさんはパワハラに該当するか否かを考えてみてください。

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F社の企画部員は月例会議で事前に準備した資料に基づいて説明し議論することを強いられている。もしその場で何も意見を述べないと、会議中全員の前で上司であるB部長から厳しく叱責される。

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いかがでしょう?パワハラであると思った人もいるでしょうし、この程度では該当しないと思った人もいると思います。

前者の方は「無理に議論を強いているのは好ましくない。(心理的ダメージ)」「全員の前で叱るのはNG(優位性)」「この程度で厳しすぎるのはいかがなものか(適正な範囲を超えてる)」という見解でしょうか?しかし、それはこの話の内容よりも「強いる」「全員の前」「厳しく」という「言葉」に反応しているから出た判断だと思います。
たとえば「厳しく」叱ることはB部長としてはそれだけこの会議を重視しているためで、誰も意見を言わなければ企画部として全く実りのある成果が出てこないと考えての行動であれば、厳しく叱責することはマイナスではありません。そう考えると必ずしもパワハラ行為とは言えないのです。

何を言いたいかというと、表面的な「言葉」で捉えるのではなく、個々の言動の背景にある感情・意図がとても大切だということです。つまりパワハラ問題は単なる事実確認ではなく、その背景にある心理状態にまで踏み込んで判断することが求められるのです。


■パワハラという言葉を安易に使わない

そしてこの極めて抽象的・包括的な「パワハラ」という言葉を使わないことが実は「パワハラ」を消す有効手段でもあるのです。

第3回コラム(https://ssl.officesato.jp/column/1539)でご説明したパワハラの6分類を見ていけば、
・身体的な攻撃:傷害・暴行(法律問題)
・精神的な攻撃:脅迫・名誉棄損・退職強要・不当解雇(法律問題)
・人間関係からの切り離し:コミュニケーション問題
・過大な要求:マネジメント問題
・過小な要求:マネジメント問題
・個の侵害:コミュニケーション問題
であり、そもそもパワハラ問題ではないのです。

何か問題があると「それはパワハラです!」と発言し、相手(上司)を加害者にし、自分は悪くないと自己の正当性を主張する免罪符となってしまう。そしてお互いのコミュニケーションがストップし、責任のなすりつけ合いが始まる。「パワハラ」が出る前にもっとコミュニケーションを頻繁に取って、「言いたいことが言える」組織を作っていくことが今大切ではないでしょうか?

 

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