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2019年01月31日 (木)コラム

海外赴任者の長期就労ビザについて

HRプラス社会保険労務士法人の三枝です。最近のトピックスとして、今年、日本で入国管理法の改正に伴い、外国人の高度人材と単純労働の受入体制を整えるため、ビザの種類が分けられることが決まりましたが、逆に、日本人が外国で就労する場合のビザはどうなるのかという点に焦点を当てて、紹介しようと思います。

■就労ビザ取得にはポイント制を採用している国がある

近年、諸外国では、日本とは逆に単純労働者の制限、自国民と外国人が雇用市場で競合しないようビザの発給数に制限をかけている国が多く見受けられます。

たとえば、1980年代から改革開放政策を取り、外資系企業と外国人人材を受け入れ始めて30年経過した中華人民共和国では、就労ビザ発給に際して、専門家と労働ビザの見直しが行われ、企業内人事異動であっても、学位、卒業大学、赴任地域、語学力、該当職務従事経験年数、年収、会社内での職位、特記事項(国際的な賞の受賞歴等)をポイント制にして、A・B・Cの三段階評価に分け、Cランクに該当する者には、就労ビザの更新を行わない、Bランクについては、状況に応じ発給するかしないかの判断が都度下されるという方針へ変更となりました。

また、最近ブレクジットで話題のイギリスにおいては、1960年代の労働力不足により、イギリス連邦に加盟する諸国からの移住者、EU加盟後は、EU域内(特にポーランド等の東欧諸国)からの単純労働者の労働力の移動により、数年前からEU域外からの単純労働者用のビザは支給停止措置を取っています。イギリスの場合、企業内人事異動の時は別枠カテゴリーで労働ビザの発給可否判断が下されますが、現地法人での新たな採用の場合は、語学力、該当職務の従事経験年数、年収、イギリス国内でのイギリス自国民への求人のバッティングがないか等の総合判断で就労ビザの発給可否が決まります。

■ビザの取得時の職務従事歴の考え方について

日本と外国での職務歴の考え方には、大きな隔たりがあることがあります。日本の社会においては、従業員をゼネラリストとして育成するために、大学の学位とは関係なく、部署異動を行うケース(たとえば、卒業学部に関係なく、営業から経理、経理から人事へ異動のようなケース)がありますが、ビザの取得時には、弊害が生じる国があります。

ヨーロッパやアメリカ、中国などでは、学位に応じて、専攻分野に関連した職位に就き、給与の良いポジションがあれば、会社間で転職を繰り返すジョブホッパーと呼ばれる事象が頻繁に見受けられます。しかし、1つの会社で勤務年数は少なくとも、ビザ申請時に出す職務履歴書では、専門職としての経験年数、及び、スキルで点数加算をしてもらえる可能性が高いです。

しかし、卒業学位に関連性のない職務に従事し且つ1つの部署での職務経歴が短い場合、会社の単純な勤続年数ではなく、赴任先国での従事予定職務に関連した職務で何年の経験があるのかという点の審査で疑義が生じる場合があります。

■語学力の証明について

語学力証明については、企業内人事異動であっても証明を求められる国とそうでない国とがありますが、赴任先国の大学等で学士以上の学位を持っている場合にはビザ更新時の点数加算考慮項目となることがあります。

また、語学力証明でビザ申請時に使用できる試験の種類については各国でそれぞれ指定試験がありますので、それに準じた資格を持っている場合には特記事項としてビザ申請時に資格証の添付をしましょう。

たとえば、中華人民共和国のビザ申請で使える指定試験は漢語水平考試(HSK)、イギリス連邦加盟諸国(イギリスやオーストラリア、ニュージーランドなど)ではIELTS(大学留学用と就業用で別試験)の試験が有効となります。ビザ審査基準においては規定されているスコアがありますので、各国大使館へのビザ申請時に照会をしましょう。EU諸国においてはCEFRと呼ばれる語学運用能力水準規定が定められていますので、各国のビザ審査規定に準じた資格を取得しておくことは、申請上の強みになるといえます。

また、語学力証明については、学位については一生有効ですが、指定試験についてのスコアの有効期間がおよそ2年間と制限がかかっているケースが多いですので、定期的に試験を受けることが必要になる場合もありますので、注意をしましょう。

■ビザ取得時の想定賃金・年収について

就労ビザ取得時に申請する想定年収については、最新の情報を収集するようにしましょう。企業内人事異動であったとしても、赴任先国で指定されている賃金の基準に満たない場合、疑義事項として、やはり審査上不利になるケースがあります。

法律の条文で決まっているのではなく、通達で処理している国もあり、頻繁に改定されますので、申請前に赴任先国の大使館へ都度確認をしてください。赴任先各国の平均的な賃金を下回るような水準ですと雇用市場に悪影響であるとみなされることがあります。赴任先各国が政策として保護的措置のため設けている水準である場合が多いですので、1年前と今とでは水準が変わっているということもしばしばですので注意しましょう。

■まとめ

今回は、海外赴任者の長期就労ビザについて焦点を当てて、紹介いたしました。紹介できなかった90日以内の短期海外出張や90日以上の長期海外出張など、海外で一時的に働く場合にも、ビザの申請要否を必ず確認してください。90日以内の観光目的であれば、日本のパスポートであればビザ不要の国がほとんどですが、海外での一時的でも就業がある渡航の場合には、ビザを求められるケースも多々あります。従業員が海外での無用なトラブルに巻き込まれないため、また、不法就労防止のため、観光と就業は対応が全く違うということを念頭に起き、各国大使館へ確認をするようにして下さい。また、就労関係のビザは取得までに2カ月以上かかるケースも多々ありますので、早めに赴任先・渡航先各国の大使館へ照会をかけるようにしましょう。

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