コラム

コラム 詳細

2020年03月12日 (木)コラム

「高年齢労働者の安全と健康に関する有識者会議」の報告書が提出されました

こんにちは。HRプラス社会保険労務士法人の須永です。
令和元年8月~令和元年12月にかけて行われておりました、「人生 100 年時代に向けた高年齢労働者の安全と健康に関する有識者会議」の報告書が令和2年1月17日に提出されました。
厚生労働省はこの報告書を踏まえ、今年度中に高年齢労働者の安全と健康に関するガイドラインを作成し、次年度に向けてその普及促進を図っていくとしています。
今回は、この報告書についてご紹介します。

○「人生 100 年時代に向けた高年齢労働者の安全と健康に関する有識者会議」とは?
人生100年時代を迎え、高齢者から若者まですべての人が元気に活躍でき、安心して暮らせる社会づくりが必要とされています。今後、60歳以上の雇用が一層進むものと予測される中、労働災害による休業4日以上の死傷者のうち、60歳以上の労働者の占める割合は26%(平成30年)で増加傾向にあります。こうした状況を踏まえ、高年齢労働者の安全と健康に関して幅広く検討するため、有識者会議が行われました。

○高齢者が働きやすい職場環境の実現のために(ガイドラインに盛り込むべき事項)
事業者に求められる事項
高齢者の就労状況や業務内容などの各事業場の実情に応じた取り組みが必要

① 全般的事項
ア 経営トップによる方針表明及び体制整備
・企業の経営トップが高齢者対策に取り組む姿勢を表明
・対策に取り組む担当者や組織を指定する等体制の明確化
・対策について労働者の意見を聴く機会や、労使で話し合う機会を設ける
イ 危険源の特定等のリスクアセスメントの実施
・身体機能の低下による労働災害発生リスクについて、災害辞令やヒヤリハットなど
から洗い出し、優先順位の高いものから対策こ講じるリスクアセスメントを実施
※働く高齢者の安全と健康の確保のための職場改善ツールである
「エイジアクション100」のチェックリスト活用も有効

② 職場環境の改善
ア 身体機能の低下を補う設備・装置の導入
・身体機能が低下した高齢者が安全に就労し、働き続けることができるよう、
施設、設備、装置等の改善を検討、実施
例) 作業場所の照度の確保 / 通路の段差解消 / 床や通路の滑り防止
涼しい休憩場所の整備 / 介護作業等にリフト機器を導入 など
イ 働く高齢者の特性を考慮した作業管理
・敏捷性、持久性、筋力といった体力の低下などの働く高齢者の特性を考慮して、
作業内容等の見直しを検討、実施
例) 勤務形態、勤務時間の工夫(短時間勤務・隔日勤務など)
高齢者の身体特性を踏まえた作業マニュアルの策定
注意力・集中力を要する作業の作業時間を考慮 など

③ 働く高齢者の健康や体力の状況の把握
ア 健康診断
・法定の健康診断を確実に実施する。
・地域の健康診断なども活用し、働く高齢者が自らの健康状況を把握できるように
することが望ましい
イ 安全で健康に働くための体力チェックによる働く高齢者の状況の把握
・事業者、働く高齢者双方が体力の状況を客観的に把握し、
事業者はその体力に合った作業に従事させ、
高齢者はみずからの身体機能の維持向上に取り組めるよう、
体力チェックを継続的に行うことが有効
例) 介護予防の取組みで行われる 加齢による心身の衰え(フレイル)チェック項目を導入
厚生労働省作成の「転倒等リスク評価セルフチェック票」などの活用

④ 働く高齢者の健康や体力の状況に応じた対応
ア 個人ごとの健康や体力の状況を踏まえた措置
・健康や体力の状況を踏まえて必要に応じ就業上の措置 など
例) 基礎疾患によっては、労働時間の短縮や深夜労働の回数の減少など
イ 働く高齢者の状況に応じた業務の提供
・高齢者に適切な就労の場を提供するため、職場における一定の働き方のルールを
構築するよう努める など
ウ 心身両面にわたる健康保持増進措置
・「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」により、
事業場内健康保持増進対策について組織的に対応するよう努める
・身体機能の向上又は回復のための取り組みを実施することが望ましい
・ストレスチェックとその集団指導を通じた職場の環境改善等のメンタルヘルス対策
を実施 など

⑤ 安全衛生教育
・法定の安全衛生教育や、作業において必要となる技能講習、特別教育を徹底
・高齢者対象の教育では、作業内容とリスクについて理解させるため、時間をかけ、
写真や図、映像等の文字以外の情報も活用
・経験のない業種、業務に従事する高齢者に対し、特に丁寧な教育訓練
・管理監督者や教育担当者に対しても高齢者対策の教育が望ましい

○まとめ
報告書では、
・60歳以上の雇用者数は過去10年間で1.5倍に増加していること
・35~64歳の男女を対象とする内閣府の意識調査では、
60歳を過ぎても働きたいと回答した人が全体の81.8%、
65歳を過ぎても働きたいと回答した人が、50.4%を占めていること
等から、高齢者の就労は今後も増えることが見込まれるとしており、今後に向けた課題と対応の方向性には、「高齢者の労働災害防止対策を進め、安心して安全に働き続けられる職場づくりを進めることは、人材確保に課題を抱える中小企業・小規模事業者等における熟練した人材の確保・定着に資する者であるとともに、経済全体の生産性向上にも寄与する可能性もあるものと考えられる」と記載されています。
ガイドラインが策定されるのをきっかけに、高齢者の働きやすい職場環境について、検討されてみてはいかがでしょうか。

ページトップへ戻る