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2020年06月25日 (木)コラム

心理的負荷による精神障害の認定基準の改正

こんにちは。HRプラス社会保険労務士法人の大谷です。

今回のコラム「ハラスメントシリーズ」は、5月29日付けで改正された「心理的負荷による精神障害の労災認定基準」についてご説明いたします。

 

◆心理的負荷による精神障害の労災認定基準とは

厚生労働省は、仕事によるストレス(業務による心理的負荷)が関係した精神障害についての労災申請を迅速に判断するよう、平成23年12月に、それまでの「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」を改め「心理的負荷による精神障害の労災認定基準(以下「認定基準」といいます)」を新たに定めました。

この認定基準では、精神障害の労災認定基準の要件を

①認定基準の対象となる精神障害を発病していること

②認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること

③業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと

と定めています。つまり、精神障害が労災認定されるには、①→②→③のフローですべて要件が満たされることが必要なのです。

 

このうち②については、「業務による心理的負荷評価表」によって「特別な出来事」か「特別な出来事以外の出来事」かに分けて判定する仕組みになっています。「特別な出来事」(例えば、生死にかかわる、極度の苦痛を伴う又は永久労働不能となる後遺障害を残す業務上の病気やケガをしたこと)に該当する場合は、心理的負荷の総合評価は「強」となります。一方「特別な出来事以外の出来事」の場合は、

(1)「出来事」の平均的な心理的負荷の強度の判定(「具体的出来事」への当てはめ)

(2)出来事ごとの心理的負荷の総合評価

(3)出来事が複数ある場合の全体評価

の手順により、心理的負荷の強度を「強」「中」「弱」と評価します。

この②の段階で「中」「弱」と評価される場合は労災となりません。「強」の場合が②を満たすことになるのです。

 

◆今回の改正で何が変わったのか

今回の認定基準の改正は、パワーハラスメント防止対策の法制化などを踏まえて、昨年12月から「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」にて検討が行われてきました。その報告を受け、「パワーハラスメント」の出来事を「心理的負荷評価表」に追加するなどの見直しが行われました。

 

すなわち、これまでは上司や同僚等から、嫌がらせ、いじめ、暴行を受けた場合には、「対人関係」という類型の中にある「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又 は暴行を受けた」の出来事で評価していたのですが、改正により「パワーハラスメント」が類型に新規追加され「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」という具体的出来事が加わりました。一方、「対人関係」の中に「同僚等から、暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせを受けた」という「パワーハラスメント」に当たらない暴行やいじめ等についての文言の修正がなされています。

 

以上から、今回の改正はあくまで「パワーハラスメント」の定義化に基づいた改定に過ぎないことがおわかりでしょう。「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会報告書」においても

『今般の見直しは、新たな医学的知見等に基づきパワーハラスメントに係る出来事を新しく評価対象とするものではなく、パワーハラスメント防止対策の法制化等に伴い職場における「パワーハラスメント」の用語の定義が法律上規定されたことを踏まえ、同出来事を心理的負荷評価表に明記するとともに、これに伴って整理を要すると考えられる心理的負荷評価表の項目について必要な改定を行うものである。』

と記述しており「新しく評価対象とするものではない」と明言しています。

 

とはいえパワハラも同僚等からの暴行又はいじめ・嫌がらせも、心理的負荷の強度は「強」です。「強」に該当するのは、これら以外には「重度の病気やケガ」「業務に関連した重大な人身事故、重大事故」「会社の経営に影響するなどの重大な仕事上のミス」「退職の強要」の4項目だけですので、使用者としては十分な対策を講じる必要があることは認識していただきたいと思います。

 

◆最後に

以上が改正の実態ですが、改正内容は、報告書の別紙1と別紙2にわかりやすく記載されていますので、ぜひ一度目を通してみてください。

https://www.mhlw.go.jp/content/11201000/000634906.pdf

なお施行日は6月1日。法改正と同じ日です。

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