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2021年10月28日 (木)コラム

偽装請負とアジャイル型開発

こんにちは、HRプラス社会保険労務士法人の星野陽子です。

さて、システム開発の手法のうち、開発要件の全体を固めることなく開発に着手し、市場の評価や環境変化を反映して、開発途中でも要件の追加や変更を可能とするものは「アジャイル型開発」と呼ばれますが、アジャイル型開発が偽装請負と解されることはないのでしょうか。

今回は、アジャイル型開発と「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」について、確認していきましょう。

■労働者派遣と請負

そもそも、労働者派遣事業は、派遣元事業主が自己の雇用する労働者を、派遣先の指揮命令を受けて、この派遣先のために労働に従事させることを業として行うことと定義されています(労働者派遣法第2条第1号および第3号)。

一方、請負とは、労働の結果としての仕事の完成を目的とするもの(民法632条)です。つまり、労働者派遣と請負との違いは、請負の場合は、発注者と受注者側の労働者との間に指揮命令関係を生じないという点にあります。

そして、発注者と受注者との間で請負契約等の形式をとりながら、実態として発注者が受注者の雇用する労働者に対して直接具体的な指揮命令をして作業を行わせているような場合をいわゆる偽装請負といい、この偽装請負は、労働者派遣法に違反するものとされています。

■アジャイル型開発の場合

アジャイル型開発の場合でも、労働者派遣と請負等(委任、準委任を含む)のいずれに該当するかについては、契約形式ではなく、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号)に基づき、実態に即して判断されます。

適正な請負等と判断されるためには、受注者が自己の雇用する労働者に対する業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行っていること、請け負った業務を自己の業務として契約の相手方から独立して処理することが必要です。

アジャイル型開発においても、実態として、発注者側と受注者側の開発関係者が対等な関係の下で協働し、受注者側の開発担当者が自律的に判断して開発業務を行っていると認められる場合には、受注者が自己の雇用する労働者に対する業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行い、また、請け負った業務を自己の業務として契約の相手方から独立して処理しているものとして、適正な請負等と判断されます。

ですから、発注者側と受注者側の開発関係者が相互に密に連携し、随時、情報の共有や、システム開発に関する技術的な助言・提案を行っていたとしても、実態として、発注者と受注者の関係者が対等な関係の下で協働し、受注者側の開発担当者が自律的に判断して開発業務を行っていると認められる場合であれば、偽装請負と判断されるものではありません。

しかし、実態として、発注者側の開発責任者や開発担当者が受注者側の開発担当者に対し、直接、業務の遂行方法や労働時間等に関する指示を行うなど、指揮命令があると認められるような場合には、偽装請負と判断されることになります。

■おわりに

いかがでしたか。

アジャイル型開発が偽装請負と判断されることがないようにするためには、例えば、発注者側と受注者側の開発関係者のそれぞれの役割や権限、開発チーム内における業務の進め方等を予め明確にし、発注者と受注者の間で合意しておくことや、発注者側の開発責任者や双方の開発担当者に対して、アジャイル型開発に関する事前研修等を行い、開発担当者が自律的に開発業務を進めるものであるというようなアジャイル型開発の特徴についての認識を共有しておくこと等が重要なのです。

業務の遂行方法や労働時間等に関する指示を行うことが必要になった場合には、受注者側が管理責任者を選任するなどして受注者自らが指揮命令を行うなど、適正な請負等と判断されるような体制を確立しましょう。

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