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2021年11月08日 (月)コラム

【IPOコラム】第5回「IPOにかかわるコーポレート・ガバナンスと上場審査の基準について」

こんにちは、HRプラス社会保険労務士法人の早津です。

『IPO準備会社のHR(人事労務担当者)が担うべき役割と実務』の第5回目では、コーポレート・ガバナンスと上場審査の基準についてご案内いたします。

 

■コーポレート・ガバナンス

「コーポレート・ガバナンス」とは、会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みを意味します。

上場準備において、経営者がコーポレート・ガバナンスを非常に堅苦しく、煩雑なものとだけ認識していることも少なくありません。この定義にある「透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組み」のうち、透明性・公正性のある意思決定を行う仕組み作りにおいて、従来よりも制約が加わることになることが一因であると考えられています。

コーポレートガバナンス・コード策定の契機となった政府公表の「『日本再興戦略』改訂2014」(平成26年6月24日)において、コーポレート・ガバナンスの強化は「日本の『稼ぐ力』を取り戻す」ための鍵となる施策と位置付けられており、コーポレート・ガバナンスを強化することにより「経営者のマインドを変革し、グローバル水準のROEの達成等を一つの目安にグローバル競争に打ち勝つ攻めの経営判断を後押しする仕組みを強化していくことが重要である」と述べられています。

つまり、コーポレート・ガバナンスは、持続的に企業価値を向上させるために「果断な意思決定を行うための仕組み」でもあるということを意識することが重要です。

 

■上場審査の基準

企業のコーポレート・ガバナンスおよび内部管理体制が適切に整備されているかについては、具体的には次の基準に適合しているか否かが審査されます。

a役員の適正な職務の執行を確保するための体制の整備運用状況

役員の適正な職務の執行を確保するための体制が、以下に掲げる事項その他の事項から、相応に整備され、適切に運用されている状況にあると認められること。(「上場審査等に関するガイドライン(東京証券取引所)」Ⅱ4.(1)等を一部要約)

(1)役員の職務の執行に対する有効な牽制及び監査が実施できる機関設計及び役員構成であること。この場合における上場審査は、有価証券上場規程(以下「上場規程」という)第436条の2(独立役員の確保)から第439条(業務の適正を確保するために必要な体制整備)までの規定に定める事項の遵守状況を勘案して行われる。

(2)効率的な経営のために役員の職務の執行に対する牽制及び監査が実施され有効に機能していること。

この基準では、適切かつ有効なコーポレート・ガバナンスの体制を構築しているかどうかを確認するため、コーポレート・ガバナンスに対する基本的な考え方、機関設計や役員構成の状況、現在の体制を採用している経緯等が確認されます。

b内部管理体制の整備運用状況

経営活動を有効に行うため、会社の内部管理体制が、以下に掲げる事項その他の事項から、相当に整備されている状況にあると認められること。(「上場審査等に関するガイドライン(東京証券取引所)」Ⅱ4.(2)等を一部要約)

(1)経営活動の効率性及び内部牽制機能を確保するに当たって必要な経営管理組織(社内諸規則を含む)が、適切に整備され、運用されている状況にあること。

(2)内部監査体制が、適切に整備され、運用されている状況にあること。

この基準では、上場会社として経営活動を適切かつ継続的に行っていくために、十分な管理組織が整備、運用されているかどうか、効率的な経営活動を行う一方で事故、不正、誤謬をある程度未然に防止し、不測の損失を防ぐなど適切な対応ができる状況にあるかどうかが確認されます。

c必要な人員の確保状況

経営活動の安定かつ継続的な遂行及び内部管理体制の維持のために必要な人員が確保されている状況にあると認められること。(「上場審査等に関するガイドライン(東京証券取引所)」Ⅱ4.(3)等)

この基準では、経営組織の維持・管理に必要な人員を確保できる状況にあるか確認されます。

d会計組織の整備運用状況

会社の実態に即した会計処理基準を採用し、かつ、必要な会計組織が、適切に整備、運用されている状況にあると認められること。(「上場審査等に関するガイドライン(東京証券取引所)」Ⅱ4.(4)等を一部要約)

この基準では、売上計上基準等をはじめとする会計処理基準が会社の実態に即したものであるか否か、その運用が恣意的なものとなっていないか否か等について、経理規程等に定められている会計基準を踏まえ、会計監査人の見解も参考にしながら確認されます。

e法令遵守体制の整備運用状況

経営活動その他の事項に関する法令等を遵守するための有効な体制が、適切に整備、運用され、また、最近において重大な法令違反を犯しておらず、今後においても重大な法令違反となるおそれのある行為を行っていない状況にあると認められること。(「上場審査等に関するガイドライン(東京証券取引所)」Ⅱ4.(5)等)

この基準では、経営活動に関係する法規制、監督官庁等による行政指導の状況を確認のうえ、当該法令等を遵守するための体制として、内部監査、監査役監査等の監査項目に経営活動に関する法規制等の項目が反映されているかどうかについて確認されます。

 

上場準備においては、知らない法令等を遵守することは困難であり、行政処分等を受けてはじめて法令違反であることを認識するということも起こりうるため、外部の専門家の利用を含め、法令を遵守するための有効な体制を構築し運用することが重要です。

もし、法令違反が発覚した場合は、速やかに関係者にその事実を報告する必要があります。上場が近づくにつれ、社内で対応策を協議してからなどと考えがちですが、会社が問題を認識してから報告までの期間が長くなるほど、隠蔽しようとした印象を与えることになるため、事実は事実として伝えたうえで、適切な対応を検討すべきといえます。

 

■おわりに

HRプラス社会保険労務士法人は、東京都渋谷区恵比寿に事務所を構え、全国を対象として労務DDを積極的に展開し、豊富な実績のもと上場に向けた支援を行っています。人事労務領域でIPOが躓くことのないよう、早めのご相談をお待ちしております。

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