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2022年01月19日 (水)コラム

【IPOコラム】第9回「労務監査に関する諸法令と概要②」

こんにちは、HRプラス社会保険労務士法人の早津敦弘です。

『IPO準備会社のHR(人事労務担当者)が担うべき役割と実務』をテーマにコラムを連載しておりますが、前回に引き続き「労務監査に関する諸法令と概要」について、ご説明いたします。今回は、労働基準行政関連法令の最低賃金法です。

最低賃金法

賃金の最低基準を定めている最低賃金法においては、地域別最低賃金と業種ごとに定める特定最低賃金の2種類があります。近年、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の格差是正のために、地域別最低賃金は毎年年率3%程度を目途に大幅な引き上げが実施されています。政府は全国加重平均が1,000円になることを目指しており、引き続き大幅な引き上げが見込まれています。

特定最低賃金は、特定地域内の特定の産業について、関係する労使が基幹的労働者を対象として、地域別最低賃金より金額水準の高い最低賃金を定めることが必要と認めるものについて設定されており、地域別最低賃金と特定最低賃金のいずれも対象となる産業においてはいずれか高い方の最低賃金を支払わなければならないこととなっています。

近年、最低賃金は全国的に毎年10月に大幅な改定をしているところですが、パートタイマーや定額の時間外労働を含んだ設定をした採用時の賃金が、最低賃金を下回っていないかを毎年チェックしておく必要があるでしょう。

 

次に最低賃金の対象となる賃金について確認します。最低賃金の対象となる賃金は、毎月支払われる基本的な賃金です。具体的には、実際に支払われる賃金から次の賃金を除外したものが最低賃金の対象となります。

(1)臨時に支払われる賃金(結婚手当など)

(2)1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)

(3)所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)

(4)所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)

(5)午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分  (深夜割増賃金など)

(6)精皆勤手当、通勤手当及び家族手当

出典:厚生労働省ホームページ

https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/kijunkyoku/minimum/minimum-12.htm

IPOの審査においては、未払い賃金の有無およびその精算は必ずクリアしなければならない重要なポイントです。(※)、パートタイマーの時給を最低賃金で設定している場合では、最低賃金改定後も従前の賃金が支払われていないかなど、最低賃金法を正しく理解したうえで確認する必要があるでしょう。

(※)定額残業手当を支給している場合に最低賃金を下回ってしまっている場合としては、例えば、基本給と定額残業手当をあわせた賃金の総額を1か月平均所定労働時間で除した場合に算出された時間単価は、最低賃金を超えていたとしても、基本給のみを1か月平均所定労働時間で除した場合に算出される本来の時間給が、最低賃金を下回ってしまっている場合などがあります。最低賃金は毎年見直しがされていますので、改定される都度、最低賃金を下回っていないか、正しい方法で確認する必要があるのです。

具体的に考えてみましょう。東京都においては、令和2年10月1日時点と比べ令和3年10月1日時点の地域別最低賃金は28円引き上げられています。これを考慮して、基本給を上昇させることはもちろん、定額残業手当についても再計算する必要があります。

a.月平均所定労働時間:160時間

b.みなし残業時間  : 45時間

c.みなし深夜残業時間: 10時間

 

①令和2年の最低賃金(1,013円)における定額残業手当の場合

162,100円(基本給)+57,000円(定額残業手当)+2,600(定額深夜残業手当)=221,700円

 

②令和3年最低賃金:(1,041円)における定額残業手当の場合

166,600円(基本給)+58,600円(定額残業手当)+2,700(定額深夜残業手当)=227,900円

 

■おわりに

HRプラス社会保険労務士法人は、東京都渋谷区恵比寿に事務所を構え、全国を対象として労務DDを積極的に展開し、豊富な実績のもと上場に向けた支援を行っています。人事労務領域でIPOが躓くことのないよう、早めのご相談をお待ちしております。

 

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