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2022年01月24日 (月)コラム

【IPOコラム】第10回「労務監査に関する諸法令と概要③」

こんにちは、HRプラス社会保険労務士法人の早津敦弘です。

『IPO準備会社のHR(人事労務担当者)が担うべき役割と実務』をテーマにコラムを連載しておりますが、前回に引き続き「労務監査に関する諸法令と概要」について、ご説明いたします。今回は、労働基準行政関連法令の労働者災害補償保険法と労働安全衛生法です。

労働者災害補償保険法

労働基準法の第8章に規定されている条項では、業務上の災害に伴う療養補償、休業補償、障害補償、遺族補償などの使用者における災害補償責任を定めています。労働者災害補償保険法では、労働基準法における災害補償責任を担保するため、保険制度に関する単独の法令として整備が行われています。労務監査における同法の具体的視点としては、次に掲げるとおりです。

①労働保険の適用業種は適正か

②支店・営業所の保険関係の成立を行っているか

③加入要件とおりに手続が行われているか

④労働保険料の算定基礎は適正か

⑤海外派遣者の取り扱いは適正か

⑥兼務役員の報酬の取り扱いは適正か

⑦被保険者に関する書類の保存期限は適正か など

 

労働安全衛生法

労働安全衛生法では、労働災害防止に関する総合的計画的な対策を推進し、職場における労働者の安全と健康を確保するとともに快適な職場環境の形成を促進するため、危害防止基準の確立、責任体制の明確化、自主的活動の促進などの労働者の安全衛生に関して定めています。

働き方改革関連法においても、健康管理を目的とした時間外・休日労働についての労働時間管理を同法において厳に規制することとなりました。

過労死防止対策に代表されるように、労働時間管理が労働基準行政の重要課題として挙げられている昨今では、当該法令についての重要性が非常に高くなったといえます。

また、労災事故が起きた際に迅速な報告書の提出が義務付けられていますが、こうした手続が適正に行われているかなども重要な視点です。このほか、労務監査における同法の具体的視点は、次に掲げるとおりです。

①50人以上の従業員を使用する事業場である場合、衛生委員会は設置しているか

②雇入れ時の健康診断は行われているか

③50人以上の従業員を使用している場合、1年に1回ストレスチェックを実施しているか

④配置転換時に安全衛生教育を行っているか

⑤粉じん、石綿等による有害な業務を行う作業場である場合、作業環境測定を行い、その結果を保存しているか

⑥健康情報取扱規程を作成しているか

⑦産業医等に対して労働者に関する以下の健康管理等に必要な情報を提供しているか など

 

もし過労死等が発生した場合には、企業は安全配慮義務違反を問われることになります。実際に上場審査の過程において、長時間労働による過労で労働者が倒れたことで、上場を延期せざるを得なくなった事例もあります。

過労死等を未然に防ぐために長時間労働を無くすことはもちろん、労務管理体制の見直しやハラスメント対策など労働時間のみにとらわれることなく多岐に渡る対策を講じ、健康で安全に働くことができる環境を整えることが求められます。

昨今の株式上場の申請では、労働者災害補償保険法、労働安全衛生法の労務管理に関する審査が厳しくなっています。上場準備会社において、法令上の問題を抱えている状況では審査は通りません。これらの法律を適切に解釈し、法令遵守しているか、この分野のチェックもIPO審査において重要であるといえます。

 

■おわりに

HRプラス社会保険労務士法人は、東京都渋谷区恵比寿に事務所を構え、全国を対象として労務DDを積極的に展開し、豊富な実績のもと上場に向けた支援を行っています。人事労務領域でIPOが躓くことのないよう、早めのご相談をお待ちしております。

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