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- 2022年03月30日 (水)コラム
【IPOコラム】第11回「労務監査に関する諸法令と概要④」
こんにちは、HRプラス社会保険労務士法人の早津敦弘です。
『IPO準備会社のHR(人事労務担当者)が担うべき役割と実務』をテーマにコラムを連載しておりますが、前回に引き続き「労務監査に関する諸法令と概要」について、ご説明いたします。今回は、労働基準行政関連法令の労働契約法です。
労働契約法
労働契約法は、平成19年12月に公布された比較的新しい法律ですが、労働契約における基本理念や共通する原則を体系的に定め、労使紛争を未然に防止するために民事的ルールを整理した法令です。労使紛争にともなう判例法理から労働契約上のルールを法令として明確にし、労働契約や就業規則による不利益変更、安全配慮義務、権利の濫用についても規定しています。
労務監査における同法の具体的視点としては、次に掲げるとおりです。
①労働契約の内容について、書面による確認が行われているか
②就業規則に規定された懲戒処分の手続きに則って、懲戒処分を実施しているか
③契約の更新を反復継続したうえで突如として契約期間満了による雇止めを行うことはしていないか
④解雇事由として規定されている以外の事由で解雇は行っていないか
⑤労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮ができているか など
例えば、①の労働契約は、労働契約の締結当事者である労働者及び使用者の合意のみにより成立する契約(諾成契約)ですが、契約内容について労働者が十分理解しないまま労働契約を締結又は変更し、後にその契約内容について労働者と使用者との間において認識の齟齬が生じ、これが原因となって個別労働関係紛争が生じる事態が多いため、労働契約法第4条2項では、労働契約の内容について、できる限り書面による確認が行われるよう規定されています。
また、④の解雇は、労働者に与える影響が大きく、解雇に関する紛争も増大していることから、解雇に関するルールをあらかじめ明らかにすることにより、解雇に際して発生する紛争を防止し、その解決を図る必要があります。 このため、労働契約法第16条において、権利濫用に該当する解雇の効力について規定されています。
同条は、日本食塩製造事件最高裁判決(最高裁昭和50年4月25日第二小法廷判決))で確立しているいわゆる解雇権濫用法理を規定し、解雇が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」には、 権利濫用に該当するものとして無効となることを明らかにしています。
⑤の労働者の安全への配慮では、通常の場合、労働者は、使用者の指定した場所に配置され、使用者の供給する設備、器具等を用いて労働に従事するものであることから、判例において、労働契約の内容として具体的に定めずとも、労働契約に伴い信義則上当然に、使用者は、労働者を危険から保護するよう配慮すべき安全配慮義務を負っているものとされています。このため、労働契約法第5条において、使用者は当然に安全配慮義務を負うことを規定しています。
この条文における「必要な配慮」とは、一律に定まるものではなく、使用者に特定の措置を求めるものではありませんが、労働者の職種、労務内容、労務提供場所等の具体的な状況に応じて、必要な配慮をすることが求められるものです。
なお、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)をはじめとする労働安全衛生関係法令においては、事業主の講ずべき具体的な措置が規定されているところであり、これらは当然に遵守されなければならないものとされています。
昨今の労働関係を取り巻く状況をみると、就業形態が多様化し、労働者の労働条件が個別に決定され、又は変更される場合が増加するとともに、個別労働関係紛争が増加しています。
労働契約法にかかわる法令遵守は判例を含めた体系的な理解を要することから、当社で労務デューデリジェンスを実施しているなかでも、不十分な理解による違法な運用が多く見受けられます。これらの法律を適切に解釈し、法令を遵守して運用することで、上場審査に耐え得る労務管理体制の整備に努めましょう。
■おわりに
HRプラス社会保険労務士法人は、東京都渋谷区恵比寿に事務所を構え、全国を対象として労務DDを積極的に展開し、豊富な実績のもと上場に向けた支援を行っています。人事労務領域でIPOが躓くことのないよう、早めのご相談をお待ちしております。
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