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2022年04月21日 (木)コラム

【IPOコラム】第12回「労務監査に関する諸法令と概要⑤」

こんにちは、HRプラス社会保険労務士法人の早津敦弘です。

『IPO準備会社のHR(人事労務担当者)が担うべき役割と実務』をテーマにコラムを連載しておりますが、前回に引き続き「労務監査に関する諸法令と概要」について、ご説明いたします。今回は、職業安定行政関連法令の短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(以下「パートタイム・有期雇用労働法」という)です。

 

パートタイム・有期雇用労働法

パートタイム・有期雇用労働法は、育児や介護などの様々な事情により働く時間に制約のある労働者をはじめ多様なニーズや事情を抱えた労働者が従事しやすい一方、正社員として働く機会を得られず、やむなくパートタイム労働者や有期雇用労働者として働いている方も一定程度います。また、必ずしもパートタイム労働者や有期雇用労働者の働きや貢献に見合った待遇が確保されているとはいえない状況もあります。

こうした問題を解消し、パートタイム労働者や有期雇用労働者がその能力を一層有効に発揮することができる雇用環境を整備するとともに、多様な雇用形態・就業形態で働く人々がそれぞれの意欲や能力を十分に発揮し、その働きや貢献に応じた待遇を得ることのできる「公正な待遇の実現」に資することを目的としています。

労務監査における同法の具体的視点としては、次に掲げるとおりです。

①正規雇用労働者と職務の内容および配置等が同じと判断されるパートタイム労働者および有期雇用労働者について、賃金をはじめとするすべての待遇について、パートタイム労働者および有期雇用労働者であることを理由として、差別的に取り扱ってはいないか

②正規雇用労働者とパートタイム労働者および有期雇用労働者との待遇差について、パートタイム労働者および有期雇用労働者から求めがあった場合には、その待遇差の内容、理由について説明しているか

③パートタイム労働者および有期雇用労働者から正規雇用労働者への転換を推進するための措置を講じているか

例えば、上記①における均等待遇では、短時間・有期雇用労働者の職務の内容や人材活用の仕組み等が通常の労働者と同一である場合に、賃金をはじめとするすべての待遇について、差別的に取り扱ってはならないとされており、具体的には次の3つの基準によって判断されることになっています。これらの項目のすべてが実質的に同じと判断された場合には均等待遇が求められます。一方、均衡待遇の場合は、①から③の違いに応じた範囲内で処遇を決定する必要があります。

【判断基準】

①職務の内容

②職務の内容・配置変更の範囲

③その他の事情

平成31年4月から働き方改革関連法が段階的に順次施行されてきましたが、正規雇用労働者と有期雇用労働者等の待遇差の改善はもとより、同一労働同一賃金に関する人事施策の見直しのみにとらわれることなく多岐に渡る対策を講じ、多様な価値観が尊重され、従業員一人ひとりの労働生産性が高められるような働きやすい職場環境の整備が求められています。

昨今の労働関係を取り巻く状況をみると、就業形態が多様化し、労働者の労働条件が個別に決定され、又は変更される場合が増加するとともに、個別労働関係紛争が増加しています。

パートタイム・有期雇用労働法にかかわる法令遵守は判例を含めた体系的な理解を要することから、労務デューデリジェンスを実施しているなかでも、不十分な理解による違法な運用が多く見受けられます。これらの法律を適切に解釈し、法令を遵守して運用することで、上場審査に耐え得る労務管理体制の整備に努めましょう。

 

■おわりに

HRプラス社会保険労務士法人は、東京都渋谷区恵比寿に事務所を構え、全国を対象として労務DDを積極的に展開し、豊富な実績のもと上場に向けた支援を行っています。人事労務領域でIPOが躓くことのないよう、早めのご相談をお待ちしております。

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