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- 2022年05月23日 (月)コラム
【IPOコラム】第13回「労務監査に関する諸法令と概要⑥」
『IPO準備会社のHR(人事労務担当者)が担うべき役割と実務』をテーマにコラムを連載しておりますが、前回に引き続き「労務監査に関する諸法令と概要」について、ご説明いたします。今回は、職業安定行政関連法令の雇用保険法です。
雇用保険法
雇用保険は、雇用保険は政府が管掌する強制保険制度で、労働者を雇用する事業は、原則として強制的に適用されます。
一般的に雇用保険と聞いてイメージされるのは失業した場合に被保険者であった人が受給する失業等給付ですが、雇用保険法は、「労働者が失業した場合及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に必要な給付を行うほか、労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合及び労働者が子を養育するための休業をした場合に必要な給付を行うことにより、労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに、求職活動を容易にする等その就職を促進し、あわせて、労働者の職業の安定に資するため、失業の予防、雇用状態の是正及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の福祉の増進を図ることを目的」(雇用保険法第1条)としており、育児休業給付や雇用安定事業、能力開発事業も行われています。
雇用保険法に関して、IPO上特に留意が必要となるのは、事業主として被保険者の加入手続き等が適切に行われているかという点でしょう。
労務監査における同法の具体的視点としては、次に掲げるとおりです。
①被保険者の加入要件通りに手続きが行われているか
②保険料の算定基礎は適正か
③兼務役員の雇用保険料の取り扱いは適正に行われているか
④被保険者に関する書類を4年間保存しているか など
雇用保険法第4条・5条等に基づく適用事業及び被保険者の要件は次のとおりです。
●適用事業(雇用保険法第5条)
雇用保険は、一部の事業(農林水産業の個人事業で常時5以上を雇用する事業以外=暫定任意適用事業)を除き、労働者が雇用される事業を強制適用事業としている。
●被保険者(雇用保険法第4条)
雇用保険の適用事業に雇用される労働者を被保険者としている。
<適用除外>(雇用保険法第6条)
① 1週間の所定労働時間が20時間未満である者
② 同一の事業主に継続して31日以上雇用されることが見込まれない者
③ 季節的に雇用される者(同法第38条に定める短期雇用特例被保険者に該当する者を除く)であって4月以内の期間を定めて雇用される者又は一週間の所定労働時間が20間以上30時間未満である者
④ 日雇労働者(※1)であって、適用区域(※2)に居住し適用事業に雇用される等の要件に該当しない者
⑤ 国、都道府県、市町村等に雇用される者
⑥ 昼間学生
(※1)日々雇用される者又は30日以内の期間を定めて雇用される者
(※2)東京都の特別区若しくは公共職業安定所の所在する市町村の区域又はこれらに隣接する市町村の全部又は一部の区域であって、厚生労働大臣が指定するもの
上記の②について、登録型派遣労働者で30日以下の断続的な就業を繰り返す人であっても、派遣元事業所において31日以上雇用される見込みがある場合には、雇用保険が適用されます。そして、③については、昼間部の学生であっても、卒業見込証明書があり、卒業時に就職し引き続きその事業の従事する場合は、被保険者となります。 また、通信教育、大学の夜間学部、高校の定時制等の学生は、被保険者となります。
同法における近時の改正としては、令和4年1月1日から65歳以上の労働者を対象に「雇用保険マルチジョブホルダー制度」が新設されました。
従来の雇用保険制度は、主たる事業所での労働条件が1週間の所定労働時間20時間以上かつ31日以上の雇用見込み等の適用要件を満たす場合に適用されますが、これに対して、雇用保険マルチジョブホルダー制度は、複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者が、そのうち2つの事業所での勤務を合計して以下の要件を満たす場合に、本人からハローワークに申出を行うことで、申出を行った日から特例的に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができる制度です。
また、令和4年3月30日に「雇用保険法等の一部を改正する法律案」が国会で成立したことに伴い、令和4年4月1日以降の雇用保険料率の変更が生じています。
雇用保険法は、制度が複雑で全容が見えにくい上に、法改正も頻繁に行われており、理解が不十分である場合も見受けられます。この法律を適切に理解し、法令を遵守して運用することで、上場審査に耐え得る労務管理体制の整備に努めましょう。
■おわりに
HRプラス社会保険労務士法人は、東京都渋谷区恵比寿に事務所を構え、全国を対象として労務DDを積極的に展開し、豊富な実績のもと上場に向けた支援を行っています。人事労務領域でIPOが躓くことのないよう、早めのご相談をお待ちしております。
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